「じゃ、悪いけど先に上がるね」
谷山が皆に声をかけ、コートを羽織ながら通用口に向かった。
が、突然引き返し、直美の前に立った。
「藤田さん、今日これから何か用事ある?」

「そ、それは独身クリスマス予定無しの私に対する挑戦ですか」

「や、そういう込み入った誘いではなくて。この絵の依頼者に
会いに行くんだけどね、君にも紹介したい人なんだよ。
とっても素敵な人だよ」

正直、興味がある。
直美は快諾し、私服に着替える為にロッカーに向かった。
別に何という事も無いのだが、何故か化粧を直す。
手早く用意を済ませると、谷山が待つ駐車場に向かった。
谷山は誰かと携帯で話している最中だった。

「うん。部屋を見たら判るんじゃないかな、って思うんだけど。
…うん。そう、そうだろ?…じゃ、駅前で」

携帯を閉じ、振り返った谷山は意味有りげに笑いながら言った。
「これから会う人ね、かなり個性強いから。驚かないでね」

個性が強いのは主任もでしょ、と言いかけた言葉を辛うじて飲み込む。
駅に向かう車内には、山崎まさよしのカバーアルバムが小さく流れていた。