「おかさん」

「なぁに?翔ちゃん」
早智子は、息子から話しかけられた時には、出来るだけ時間を割くようにしている。

もちろん、いつも出来ることでは無い。
あくまでも『出来るだけ』である。

時には、家事の邪魔になる時もある。
たどたどしい話し方で延々と続く、取り留めも無い話を聞いているのは、楽しい反面煩わしい時も有る。

その日がまさにそうだった。
降り続く雨のせいかもしれない。

「あのね、あのね、もしわけおざあません、ってなぁに」

「よく分からないわ。もう一度言ってみて」

「おぉしあけござませ」
やはりよく解らない。
今日は休日だから、敏夫がいるはずだ。

(まだ寝てるのかしら…)
代わってもらおうと、早智子は寝室に向かった。

夫は既に目覚めていた。誰かと携帯で話している。
その会話を聞いて、翔太の質問の答が解った。

敏夫は、しきりにこう言っていたのだ。

「は、申し訳ございません。はい、はぁ全く仰る通りで。申し訳ございません」

その度に頭を下げる。
早智子は、そっとドアを閉めた。

「翔ちゃん、申し訳ございませんていうのはね」
「うん」

「本当にごめんなさい、っていうことよ」

二へ