翌朝、またもや磯部が来店した。
「あ、磯部さん。おはようございます。さ、始めましょうか」

だが、磯部は初めて見かけた時のように、眩しげに
ゲーム画面を見つめているだけだ。

「…どうなさったんですか」

「はは、ちと困ったことが起きての」

「困ったこと…?」

実は、と磯辺は話し始めた。
「離婚が成立しての。孫は母親と一緒に
三日後、東京へ行ってしまうんじゃよ。
折角あんたに教えてもらうつもりだったが、
もう必要なくなってしもうた。
旅立つ前にもう一度、思い切り遊んでやりたかったのう…」

直美は言葉を無くし、売場を見回した。
どうしてやることも出来ない自分が歯がゆい。
その目が、ふとある物の上で止まった。

(そうだ。もしかしたら…)

「磯部さん。こっち来てもらえます。これ、これ出来ます?」

「あ?…あぁ、それは」
直美が磯部を連れて行った先は、昔懐かしい玩具が置いてある
コーナーであった。
そこには、竹ひごと油紙で出来た和凧や、メンコ、ロー石、銀玉鉄砲などが
置いてある。
直美が差し出したのは、その中の一つ、ベーゴマであった。

五へ