十兵衛は久しぶりに出会った父、宗矩のあまりの
代わり様に愕然としていた。
「父上。どうなされた、その痩せ様は。どこかお悪いのか」
「十兵衛か。確かに病んでおる。だが、この病、医者や薬では
到底治らぬ」
それでは何が、と言いかけて十兵衛は、ふと思い当たった。
「どなたかに呪式をかけられましたな?」
宗矩は壮絶な笑顔を見せた。
「さすがじゃ。それでこそ柳生一の剣客」
「相手は。相手の見当は?」
「ついておる。良いか、十兵衛。心して聞け。
おぬしを呼んだのは他でもない、その相手を退治て欲しいからよ。
ことはわし一人の問題ではないのだ」
ごほごほと咳き込む。
十兵衛は思わず、近寄って背中をさすった。
痩せ細った宗矩の背中が痛々しく、さする手が止まった。
「父上一人の問題ではないと?」
「さよう。恐れ多くも上様も同じ呪をかけられておる。
そして、その相手の名は」
宗矩は声をひそめた。まるで、その相手が聞いているとでもいうように。
「天海僧正」
思わず息を呑み、父をさする十兵衛の手が止まる。
「天海…しかし、あの者はすでに齢百歳に近い者。
第一、江戸幕府を創り上げた影の人物…」
「だが間違い無いのだ、十兵衛。彼奴は堂々と宣言しおった。
江戸幕府を潰す、と」
確かに、天海は陰陽道、風水に通じている。
だが何故に秀忠公のお命を狙うかが判らない。
三十二へ
代わり様に愕然としていた。
「父上。どうなされた、その痩せ様は。どこかお悪いのか」
「十兵衛か。確かに病んでおる。だが、この病、医者や薬では
到底治らぬ」
それでは何が、と言いかけて十兵衛は、ふと思い当たった。
「どなたかに呪式をかけられましたな?」
宗矩は壮絶な笑顔を見せた。
「さすがじゃ。それでこそ柳生一の剣客」
「相手は。相手の見当は?」
「ついておる。良いか、十兵衛。心して聞け。
おぬしを呼んだのは他でもない、その相手を退治て欲しいからよ。
ことはわし一人の問題ではないのだ」
ごほごほと咳き込む。
十兵衛は思わず、近寄って背中をさすった。
痩せ細った宗矩の背中が痛々しく、さする手が止まった。
「父上一人の問題ではないと?」
「さよう。恐れ多くも上様も同じ呪をかけられておる。
そして、その相手の名は」
宗矩は声をひそめた。まるで、その相手が聞いているとでもいうように。
「天海僧正」
思わず息を呑み、父をさする十兵衛の手が止まる。
「天海…しかし、あの者はすでに齢百歳に近い者。
第一、江戸幕府を創り上げた影の人物…」
「だが間違い無いのだ、十兵衛。彼奴は堂々と宣言しおった。
江戸幕府を潰す、と」
確かに、天海は陰陽道、風水に通じている。
だが何故に秀忠公のお命を狙うかが判らない。
三十二へ