幸一が最初心配していた、ホームシックは二人には見られない。
帰りたいと思う家があってこそのホームシックなのだ。
すでに二人にとっての家はこのアパート、
二人にとっての親は、幸一であった。
ホームシックなど起こるはずも無かった。

だが、幸一が見た映画とは違い、今の世の中は子供達三人だけで
暮らしていけるような社会では無い。
幸一達も既に、好奇の目に晒されつつあった。

いつものように万引した食品を鞄に詰め、家に帰る途中。
幸一は中年女性に声をかけられた。
「ねぇ。あんた、あそこのアパートで暮らしてるでしょ。
ご両親をお見受けしないけど、何なさってる人?」

幸一は物も言わずに駆け出した。
(まずいな、このままじゃ掴まって家に戻されてしまう…)

幸一はどうしたら良いか判らなくなった。
まだ、小学五年生なのだ。
命を背負うには、あまりに幼い。
幸一は、いつの間にか立ち止まって泣き出していた。


七へ