「あ。…もうーっ」
ダメな時は何もかもダメだ。
やっぱり会社辞めよう。どうして急に、とか言われたら
ボタンが飛んだんです、って言うのさ。
背伸びしたまま、倫子はそこまで考えた。

「でかい胸してっからそうなるのよ」
突然のセリフに、倫子は背伸びしたまま声の主を見た。
同僚の宏美だ。
左手に裁縫セット、右手に倫子のボタンを持っている。
何故だかコンパニオン立ちだ。
パニオン立ちのまま、宏美が言った。

「脱いだ、って言って」

「はぁ?」

「うちの田舎じゃさ、服着たままボタン付けとかしちゃダメなのよ。
縁起悪いんだって。だから『脱いだ』って言うの」

何だろうか。この、思い切り日常の風景は。
倫子は呆れながら、渋々「脱いだ」と答える。

「ばぁちゃんがうるさくてさ、そういうことに」
ぼそぼそと呟きながらも、宏美の手はテキパキと動く。
二分も経たぬうち、倫子の服は元通りになった。

「はい出来上がり。」

「あ…ありがとう」


三へ