今だ。奴の小指を掴み、逆に曲げる。
のけぞった奴の後頭部に膝を入れ、倒れこんできた首筋に拳を叩きつけた。

師範から『命のやり取り』以外には使うなと言われた技だ。
そして正に、今がその時だった。

奴の血が緑色では無く、赤いことに不思議な感動を覚えながら俺は立ち上がった。

つられて立ち上がろうとする奴のこめかみ目掛け、もう一度膝をぶち込む。


ゆっくりと倒れていく奴の背後に回り込み、首に腕を絡める。

これ以上の痛みはお互いに必要ない。

チョークスリーパーが奴の意識を飛ばす。それで決着だ。

その時、奴がつぶやいた。無意識だろう。

「負けられない。負けられないんだ。敏哉君の為に…」


何だ?敏哉君?
俺は首をきめながらリングサイドを見渡した。


車椅子の少年がいた。ブルブルと震えながら、リングを見守っている。

「おい。恐竜。敏哉ってのはあの車椅子の子か。あの子がどうした」

「く、熊には関係ないよっ」

「なにを。あっさり落とすぞ、こら」

「あの子は、あの子は勇気さえあれば立ち上がって歩けるんだよっ!」

ふん。そういう事か。
ならば尚更負けるわけにはいかない。


四へ