十兵衛達は言葉も出ない。太郎丸は瞬きすらしない。
天海を飲み込んだ袋は二、三度大きく動くと、ごぼっという音を立て、
人を吐き出した。
ぬらぬらと濡れる体で立ち上がった人物は、冷ややかな笑みを浮かべている。
「やはり、この姿の方がしっくり来るのう。十兵衛、待たせたな。天海である」

「なっ…」

「不思議であろうな。はは、たいそう驚いた様子。
よかろう。種を明かして進ぜよう。構わぬか?布袋和尚」

「御意」
布袋はにやり、にやりと笑いながら、袋を見せた。

「十兵衛殿。さきほど私が飲み込まれた袋。これぞ布袋の福袋。
この中に入ればたちどころに若返り、死ぬことは無い」
確かに天海の今の姿は、齢三十としても不思議はない。

「どうじゃ、素晴らしいであろう?」

だが十兵衛は、眉をひそめ、天海を睨みつけた。
「その袋…何故にそれほど腐臭が漂う。天海殿、おぬしの体からもだ」

天海、布袋、大黒天が同時に笑った。
布袋は大きな腹を抱え、さも苦しそうに笑う。
「はは、ははは。さすがじゃの、十兵衛殿。たちどころにして
この袋の秘密に気付くとは。天晴れじゃ」

五十へ