お弁当をきれいに平らげた翔太は、どうにか歩き出した。

健太は、歌を歌ったり、しりとりをしたり、弟の気を惹きながら歩く。

少しずつ暗くなり始めた山道は、時折、車が通り過ぎたが、二人には気づかない。
健太が、車が近づくたびに脇へ寄ってしまうからだ。
幼い弟を車から守る為だった。
翔太はまた、疲れて座り込んでしまった。


正敏は、ようやく勤務を終えマンションに戻ってきた。

「やれやれ、だな…世間は父の日だってのに…せめて息子どもの声でも聞くか」

「もしもし…俺。どう、そっちは…健太と翔太は?」

正敏の顔色が変わった。

「…何時?いや、まだ。予定は?…二時間も前っ?…うん、大丈夫、路線の鉄道とバスをあたる」


留美はGPSで検索を依頼した。
が、山道に居る二人の位置は特定できない。

正敏は片っ端から電話をかけまくる。
バス会社で、子供の二人連れを見かけたという情報を得た。

スーツを脱ぎもせず、マンションの階段を駆け下りて駐車場に向かう。
車に乗り込みながら正敏は、山を見上げた。

「今行くからな、二人とも」

その時、暮れかけた山道に小さな人影が見えた。


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