気ままな一人暮らしだ。
誰に挨拶もいらない。古びた車に荷物を載せ、英治とラナは海へ向かった。

助手席に座るラナの耳が風にはためく。
もちろん、ロボットである以上、何の感情も無い筈だが、英治にはラナが喜んでいるような気がしてたまらなかった。

「ま、俺の勝手な思い込みさ」と笑う。
久しぶりのドライブで、英治は笑顔を取り戻していた。

「これでBGMでもありゃあなぁ…」

愚痴ってはみるが、カーラジオからは政府広報しか流れてこない。
たまに流れてくる音楽もクラシックだ。
仕方なく、英治は自ら声を張り上げ歌いだした。

大好きな『Surfin' USA』だ。

先生に言っておいてくれ、俺はアメリカ中でサーフィンするのさ

そんな意味の歌詞だ。
歌っているうち、英治は余計楽しくなってきた。

いつの間にか、ラナも遠吠えで英治の歌に参加している。

緩いカーブを何度か周り、二つ目のトンネルを抜けた時、車の窓に輝く光が差し込んだ。

目の前に白い砂浜と真っ青な海が広がった。


「ラナ、着いたぞ!海だ」

英治は車を停めると、妻の写真だけを持ち、砂浜に向かった。

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