工場から駅に向かうなら表通りが近い。
けれど井坂は裏道を選んだ。
回り道をするだけの理由が彼にはある。
柊が咲く季節なのだ。
白く咲き乱れる柊は、冬の透き通った空に良く似合う。
漂って来た香りに導かれ、その清楚な姿に出会って以来、冬の回り道は井坂の日課となった。
「あ」
見慣れた顔がある。
第二生産ライン担当の関根係長だ。
「おや」
関根も戸惑っている。
それほど親しくは無いが、無視するまでには至らぬ関係同士の微妙な間が生まれた。
破ったのは関根の方だ。ニンマリと笑い、人差し指を柊に向けた。
「こいつがね、あんまり良い香りだからね」
途端に距離が縮まる。
「ああ、あなたもですか。その香りを嗅ぐとね、もうじき年末だなぁ、って気持ちになる」
「年末年始シフトだなぁ、って気持ちにもなりますな」
違いない、と井坂は笑った。
「それじゃ」
軽く手を挙げ、関根は駅に向かった。
柊の香りを存分に楽しみ、井坂も駅に向かう。
ローカル線の小さな駅だ。
海が見えるホームには、待合室は疎か、風を遮る物が無い。
駅前の自販機で買った缶コーヒーに、せめてもの温もりを求めるしかない。
けれど井坂は裏道を選んだ。
回り道をするだけの理由が彼にはある。
柊が咲く季節なのだ。
白く咲き乱れる柊は、冬の透き通った空に良く似合う。
漂って来た香りに導かれ、その清楚な姿に出会って以来、冬の回り道は井坂の日課となった。
「あ」
見慣れた顔がある。
第二生産ライン担当の関根係長だ。
「おや」
関根も戸惑っている。
それほど親しくは無いが、無視するまでには至らぬ関係同士の微妙な間が生まれた。
破ったのは関根の方だ。ニンマリと笑い、人差し指を柊に向けた。
「こいつがね、あんまり良い香りだからね」
途端に距離が縮まる。
「ああ、あなたもですか。その香りを嗅ぐとね、もうじき年末だなぁ、って気持ちになる」
「年末年始シフトだなぁ、って気持ちにもなりますな」
違いない、と井坂は笑った。
「それじゃ」
軽く手を挙げ、関根は駅に向かった。
柊の香りを存分に楽しみ、井坂も駅に向かう。
ローカル線の小さな駅だ。
海が見えるホームには、待合室は疎か、風を遮る物が無い。
駅前の自販機で買った缶コーヒーに、せめてもの温もりを求めるしかない。