「くそ、小癪な」
「おえ、追うのじゃ」
烏天狗達が満身に力を込め、すねこすりの後を追った。

「わわわわ。来た。来た。くそ、負けねぇぞ」
すねこすりは必死に駆け、転がった。

だが、狼と違い、天狗達は障害の無い空を一直線に来る。
追いつかれるのも時間の問題であった。

このとき、このちっぽけな妖怪は、誰もが考えもしない
行動に出た。

なんと勾玉を飲み込んだのだ。
そして、進路を大涌谷に取った。
そこかしこに噴火口のある大涌谷で、とうとう、すねこすりは追い詰められた。

「捕らまえたぞ」
「もう逃げられぬわ」
「諦めて勾玉を出せ」
くちばしを揃えて脅しにかかる烏天狗達を見て、すねこすりは
不敵に笑った。

「もう飲んじまっただ。この腹ん中だ」

「何っ!ふざけたまねを。ならば、その腹掻っ捌くまで」

じりじりと後ろに下がるすねこすり。
「いやだな。おまえらには渡さねぇ。取れるものなら取ってみろ」

そう言うなり、すねこすりは噴火口の中に身を投げた。

「キジムナー。やったぞ。おらも今、行く。先生、さよなら」
すねこすりは最後まで笑っていた。