二つ頭の老人が感心したように溜息をついた。
「仁衛門。そなた、この国の者では無いな?その剣、体捌き、
どう見ても唐のものではないか」

びゅん、と音を立てて剣が止まる。
仁衛門がその動きを止めた時、僧兵達は、そのほとんどが倒されていた。

「太夫、目を覚ませ。逃げるのだ」
仁衛門に声をかけられ、ようやく紫近はうっすらと目を開けた。
周りを見て一瞬、口を押さえたが悲鳴を上げるような真似はしない。
すぐさま立ち上がり、髪からかんざしを抜く。
その気丈な姿に微笑みかけ、仁衛門は二つ頭の老人に向かった。

「これが十兵衛殿が言っていた妖しのものか。
してみると、貴様がその頭領だな。覚悟しろ」
仁衛門がまた、両手を広げ、殺戮の蝶に変化しようと構える。

「おお。こわやこわや。吉原者はさすがに怖いのう…
どれ、こちらも本気を出すとしようか、なぁ、福禄寿」

「さよう。参るとしようか、寿老人」

二つ頭の老人が、異様な動きを見せる。体が波打つように動いている。
二つの頭の丁度、真ん中に裂け目が走った。
その裂け目は一気に下まで走る。
唖然と見守る仁衛門の前で、二つ頭の老人は、二人の老人に分かれた。

六十二へ