ぼやけて見えるのは腕だけではない。
坂木の体そのものが霞んできている。

「なんだよっこれ」

何とか止めようとしているのだが、いよいよ速度は増していき、とうとう爪先が消えてしまった。

「ははぁ。生きてる人間にも効くんですな」
あくまでもマイペースな城田に向かって坂木が怒鳴った。

「どうすんだ、こら」

その声を残して坂木は消えた。
後には小さなシミだけが残った。



城田が、そのシミを撫でながら、上手くいったと呟いた。
口元には薄笑いを浮かべている。

「馬鹿やろうめが。
俺は貴様の玉突き事故に巻き込まれた被害者だよ。
簡単に作り話を信じやがって、随分そそっかしい奴だ」

城田の薄笑いは、今や哄笑に変わっている。
笑いながら城田も消えていった。