そこには、当時の小学校の卒業写真が展示されてあった。

祖母は老眼鏡をかけ、一番端から見始めた。
右から数えて七列目にそれはあった。

「ああ、居た。要さんだ」

祖母が嬉しそうにうなずいた。

「要さん…てお祖父ちゃんのこと?写真あったの!?」

奈々子が驚くのも無理は無い。


祖母・ユイと祖父・要は、終戦後のどさくさに紛れて北朝鮮から引き揚げようと試みたらしい。
だが、ユイだけが家族と共に帰国を許され、要はシベリアに抑留されたまま、二度と戻れなかった。

帰りの荷物は殆ど空であり、大切な家族の写真すら残らなかった。

それからの日々を祖母がどれほど苦労して家族を育てたか、奈々子は母親からよく聞かされていた。

祖母は、そんな苦労は何でもないことだと笑う。家族を守り育てるのは、別れ際に要さんと約束した事だからと笑う。
そして、何とか頑張って約束は果たしたよと、胸を張るのである。

ただ一つ、悔しいのは、要さんの写真が無いことかねぇと祖母はいつも言っていたのだ。

その祖父の写真が有ると言う。
奈々子も近づいて見てみた。

古びたセピア色の卒業写真の一人を祖母は指差した。

優しげに微笑む少年がそこに居た。

五へ