しばらく話を聞いて
いた老婆は、懐から
一冊の本を取り出した。

「あんたにこの本を
あげよう。
わたしはもう使う事
は無いから。」

「何の本なんですか?」

「亡くなった人を
この世に戻す方法が
書いてある。
わたしもやった。」

おそらくこの老婆は、
私を慰める為に
そんな事を言い出した
のだろう。

私は微笑みながら
受け取った。

「信じるも信じないも
あんたの勝手だ。
だけど一つだけ、
言っておくよ。
本当にやる気なら、
鬼になる覚悟が
必要だ。あんた、
鬼になれるかい?」

引き止める私に一度
だけ頭を下げ、その
老婆は後も振り返らず
に去っていった。
まるで肩の荷を
降ろしたとでもいう
ように、その顔は
晴れやかだった。

私の手元には
その本が残った。
古びた革の装丁。
何とも言えない匂いが
する。

そして私はその本を
開けてしまった。