裏庭には、ねこや堂と熊といぶの三人が居た。
レジャーシートの上にゴザを敷いて座っている。
ねこや堂が例の笑顔を見せ、静江達を手招いた。
「いらっしゃい。あ、玄関はそこだぁよ」

「玄関?」

戸惑う静江に、いぶが説明する。
「そう。玄関。今からここで、ままごとをするのよ」

「ままごと…」
なおも立ちすくむ静江と拓朗を押しのけるように、節子が
前に進み出た。
「まぁまぁ、素敵なお家ですこと。良かったら、このお茶碗使ってくださいな。
さ、しいちゃんも上がらせてもらいましょ」

節子が持っていた包みから、小さなお茶碗とお箸を取り出した。
それを見た静江は、思わず歓声をあげた。
「それ、あたしが使ってたままごとのお茶碗」

にんまりと微笑んだ節子は、ねこや堂にその茶碗を渡した。
「でもね、お皿が見つからないんですよ。おかしいのよ」

「それなら御心配なく。熊、お皿」
はいはい、と陽気に返事した熊が、その大きな手を開いた。
そこにあったのは、紫陽花の葉っぱであった。

「これですよね、緑色の薄いお皿って」

「ああ、そうそう。これこれ、これだよ。思い出した。
うちは貧乏だったからねぇ、お茶碗とお箸しか買えなくてさ、
仕方ないから紫陽花の葉っぱをお皿にしたんだ。
よく判ったねぇ」
しみじみと葉っぱを撫でる節子を優しい眼差しで見つめながら、
熊が言った。