思い出すのも苦痛らしい。
彼の顔色が蒼ざめてくる。
「血がね」

「血?」

「ええ。血が、ぽたぽたと垂れてくるんです。
ぽたり、と垂れては私の額に落ちる。
一滴ずつ、正確な間を開けて垂れてくる。
それが夜明けまで続いた」

想像してみる。
胸の上に立った女から、血が一滴ずつ滴り落ちてくる。
それがぽたりぽたりと己の額に当たるのだ。

これは…嫌だ。
たまらなく嫌だな。

「よく、正気でいられましたね」

「ええ、あと30分も続いていたら危なかったでしょうね」

「今も続いてるのですか」

「いや、昨日で終わりです。」

妙なことを言う。
その想いが私の顔に出たのだろう、彼は説明し始めた。

「次はあなたの所に出ますよ。この幽霊、伝染するんです。
私も違う人から渡された。さて、それではこれで失礼します。
頑張ってくださいね」

「ちょ、ちょっと待って」