こいつ、本当にそそっかしい奴。

坂木は怒るより先に呆れてしまった。
目の前の相手は恐縮して小さくなっている。
心なしか、影が薄くなっている。

いや、事実、薄くなっている。

「なあそうだろが、あんた…ええと」


「城田です。申し訳ない」

頭を下げると、薄い頭頂部が見えた。
余計に侘びしい。
坂木は、相手をしているのが馬鹿らしくなってきた。

「さっきも言った通り、俺は坂木。あんたが捜してるのは佐々木」

はぁ、と屁をこいたような返事をして城田は薄い頭を掻いた。
「弱ったなぁ。せっかく幽霊になれたのに」

「とり憑く相手を間違えた日にゃあ」


「とり憑くしまも無いってやつですな。あっはっは」


笑っている場合では無いだろうに、全く呑気な幽霊だ。
第一、全然怖くない。

「笑ってないでさ、早く本当の仇を討たなきゃ。
奥さんに浮気されたんだっけか」


「そうなんす。それが原因で胃を悪くしちゃってね、結果的に殺されたようなもんで。
奥さんは怖いから化けて出らんないし」

とことん情けない。
さぁ、さっさと消えてもらおう。

「どした」

「いや、それがですな、消え方を忘れちゃって」