「麻理ちゃん、もしかしたらさ」
志郎が何か期待したように言う。

「なによ」

「大猿になるんじゃないかな。だとしたら、尻尾を切るか
満月を壊すと元に戻るよ」

「あんた…マジで言ってんの?男は皆、ドラゴンボールが
好きだからってもねぇ」

だが、残念なことに、ここには刀も無ければ
月を壊せるような武道家も居ない。

いよいよ進退窮まったかに見えたその時、
ジャックの変身が始まった。
ゾワゾワと毛が伸びていく。
灰色の毛が体全体を覆っていく。
確かに、ジャックは狼男では無かった。
そこに現れたのは、オオアリクイであった。

「なにあれ」

「麻理ちゃん、知らないの?あれはねぇ、オオアリクイ。
怖い動物だよ。鋭いカギ爪で相手を切り裂く。
力も強い。強敵だね」
全く抑揚の無い声で志郎が言った。
人は、あまりにも意外な物を見るとこうなるという典型である。

「オオアリクイになったジャックは、おまえたちの肉を切り裂き、
体液を啜り、骨をスープにし、冷凍庫にストックするであろう」

オオアリクイに殺される、なかなかどうして嫌な経験である。
しかもオオアリクイの弱点など、麻理も志郎も知らない。
というか、誰も皆知らないのではなかろうか。