ミュージシャンを志している頃の俺は、形振り構わない生活を営んでいた。
そうならざるを得ない暮らしであった。
夕方近くに目覚め、スタジオのバイトに向かう。
たまにオールナイトで借りるバンドがある。
夜を徹してデモテープを作成するわけだ。
俺の仕事は受付と録音。
大抵のバンドは、午前五時には録音を終了する。
俺も始発電車に乗って薄汚れたアパートに帰り、夕方まで眠る。
そんな暮らしの毎日だ。

一番困るのが、当日キャンセルだ。
帰る電車は無い。
スタジオのオーナーからは、仕事以外でビルに
寝泊りすることを禁じられている。
仕方なく、夜の繁華街に向かう。
金があれば居酒屋で始発までねばる。

本当なら、オールナイトのサウナが楽なのだ。
仮眠室もあるし、余計な金を使わなくとも済むのだが、
寝ている間に男に襲われかけてからは選択肢から外した。

金が無い時はどうするか。
迷わず、扇町公園に向かう。
ワンカップを二~三本買うぐらいの金はある。
ギターケースのポケットにワンカップを放り込み、阪急東通りを抜けて行く。