不器用な微笑みは一瞬にして姿を消し、
代わりに狛犬が現れた。
まさに石で出来ているのでは、と思わせる冷たさがある。
亡き父の為にも頑張らねば、という気持ちが
余計に松岡を追い込んだ。

新学期当日。
教室に現れた松岡を見て、恐怖のあまり、うつむいたまま
顔を上げられぬ子供が三人居た。

(あぁ、所詮俺は狛犬だ。ならばこの厳しい顔を
 利用して子供らを指導するしかあるまい)

狛犬は、そう考えた。
そしてそのまま、二十年が経った。

「行ってくる」
朝はいつも一言だけだ。
松岡の妻、恵美子も娘である香奈もそれに慣れてしまった。

松岡はいささか張り切っていた。
今日、新任の校長が着任するのだ。
浅田礼子という女性である。
なかなかの凄腕ということであった。
学級崩壊が横行する小学校を何校も立て直してきたという。


四へ