大久保さんの故郷には、大きな神社があった。
毎年9月になると祭の準備が始まる。
広い境内は、様々な屋台で埋め尽くされるそうだ。
今はもう見ることは出来ないが、大久保さんが小学生の頃は、
見世物小屋やサーカス、お化け屋敷などの催し物の小屋も掛かったらしい。

大久保さんが小学四年生の時だ。
雰囲気を出す為か、普段、あまり人が立ち入らない場所に
お化け屋敷が設置された。
仲間内で、このお化け屋敷が大評判になった。
本物が出るというのだ。
大久保さんも入りたくて堪らなかったのだが、当時、彼の家は父親が事業に
失敗したばかりで、食べていくのが精一杯だった。
とてもではないが、お化け屋敷に入りたいなどと言える筈がない。
大久保さんは、こっそり忍び込んでやろうと思ったそうだ。

お化け屋敷と言っても、所詮はテントである。
人目を忍び、裏側に回りこむと、少し弛んだ場所が見つかった。
よし、ここからならと狙いを定め、頭から突っ込む。
テントは二重になっていた。
一枚目を潜り抜け、少し待つ。
手探りで二枚目のテントの端を捲り、また頭から突っ込んだ。
しばらくすると、暗闇に目が慣れ、仕掛けや道具が見えてきた。