もう一人の警官が道の脇に誘導し、型通りの聴取を始めたが、
どうやら興味はミリアンの胸にしか無いようだ。

「よう、ミリアン。どこまで行くんだい」

「逃げた旦那が見つかったらしいのよ。今度こそ慰謝料払わせてやる。
…どうしたのあの男」

「ああ、どうやらコカインの運び屋らしい。馬鹿な男だ、スラックスに
コカインをつけたまま運転してやがった」

「へぇぇ。おとなしそうな顔してるのにね」


ミリアンが乗っている車のトランクで、彼女の元・夫が二人の話を
聞いている。
残念ながら会話に参加する事はできない。
死んだ者は黙っているしかないからだ。

昨日の夜中、突然現れた夫はしたたかに酔っていた。
いつものように暴力が始まった。
だが今回はいつもとは違い、ミリアンからの反撃が待っていた。
泥酔して眠る夫は胸にナイフを刺され、二度と目覚めることは無かった。

州境にある墓に埋めるつもりで家を出たミリアンは、
警察の尋問をどうやって誤魔化すか悩みに悩んだ。
相手が町の住民であっても、彼等は必ず退屈しのぎに車を調べる。
何よりも脅威となるのはペティの存在だ。
麻薬を探知できる犬が、血の臭いに反応しないとは思えない。
トランクに死体を入れたまま、州境を越えることは不可能なのだ。