「馬鹿な。若がそのような事に力を貸すと思うのか!」
又佐が天海の言葉が終わらぬうちに叫んだ。
「その通り。この十兵衛、世をすねてはみたものの、まだまだ
この国が好きでな」
この時、十兵衛が油断無く見つめているのは天海では無かった。
また、布袋でもない。
大黒天である。 先ほどから十兵衛の意識が何か危険なものを感じている。
天海が快活に笑った。
「判っておる。わしが借りたいのは、人間としての十兵衛ではない。
妖しのものとしての十兵衛じゃ。大黒天。見せてやれ」
大黒天がふわりと降りてきた。
「承知」
一言だけ答え、大黒天は何事かを僧兵に命じる。
僧兵は、一人の男を連れてきた。
見ると、先ほど境内で倒れていた男だ。
大黒天は、その男の側に立ち、打出の小槌を振るった。
しゃらんしゃらんと鈴の音がする。
男は膝を抱え込むように座り込むと、徐々に小さくなっていく。
鈴の音がするたび、小さく小さくなっていくのだ。
五十二へ
又佐が天海の言葉が終わらぬうちに叫んだ。
「その通り。この十兵衛、世をすねてはみたものの、まだまだ
この国が好きでな」
この時、十兵衛が油断無く見つめているのは天海では無かった。
また、布袋でもない。
大黒天である。 先ほどから十兵衛の意識が何か危険なものを感じている。
天海が快活に笑った。
「判っておる。わしが借りたいのは、人間としての十兵衛ではない。
妖しのものとしての十兵衛じゃ。大黒天。見せてやれ」
大黒天がふわりと降りてきた。
「承知」
一言だけ答え、大黒天は何事かを僧兵に命じる。
僧兵は、一人の男を連れてきた。
見ると、先ほど境内で倒れていた男だ。
大黒天は、その男の側に立ち、打出の小槌を振るった。
しゃらんしゃらんと鈴の音がする。
男は膝を抱え込むように座り込むと、徐々に小さくなっていく。
鈴の音がするたび、小さく小さくなっていくのだ。
五十二へ