この春から、石坂は絵の学校に通い始めた。


何を今更、と周りの者は笑ったが、石坂は気にもとめない。
ただ黙々と通い詰め、技術を磨いた。

幾度も手の豆を潰し、何時間も紙に向かう。
彼には目標があったのだ。

人を描く。
そのために研鑽を惜しまなかった。

鳥はお手の物だ、すらすら描ける。
だが、人となると自信が無かったのだ。

今日、石坂はキヨさんの家に向かった。

「ほい、キヨさん、だいぶと待たせたの」

そう言うなり、石坂はキヨさんの家にある仏壇に向かう。

キヨさんのご主人の遺影に向かい、さらさらと虹の筆を走らせた。


「…出来た」

スケッチブックには、にこやかに微笑むご主人の顔が描かれていた。