河田さんは河童である。外見が似ているとか、泳ぎが達者などという意味ではない。
本当に河童なのだ。
そう、民話によく登場するあの河童だ。

外見上は、それほど人間とは変わらない。

頭の皿もちゃんとある。本人曰わく、甲羅は着脱可能だそうだ。

「亀仙人のようなもんだよ」
と笑ってみせる。

顔も、そう言われてみれば河童に似ているかなぁと思わせる程度であり、
人間社会の一員として暮らして行くのに支障は無かった。

職業はスイミングスクールの講師である。
これ以上は無いぐらいの職場だ。

私が河田さんに出会ったのも、そのスイミングスクールである。

初めてのバイトで右往左往している私を優しく指導してくれたのだ。

ある日のこと。
忘れ物を取りに帰った私は、何者かがプールで泳ぐ音を聞いた。

誰だろうと確かめに行った私は、物凄いスピードで泳ぎ回る河田さんを発見し、腰を抜かしてしまった。

人間には不可能なスピードだ。
しかもターンごとに空中に飛び出したり、水中を息継ぎ無しで泳ぎきったりするのだ。

私はすっかり見とれてしまい、ついつい拍手をしてしまった。