高々と空に舞い、一反木綿は竜馬を追った。
それを見送り、手を振る皆の中で
のっぺらぼうだけが俯いている。
竜馬の前ということで、女の顔を保ちつつ精一杯の笑顔を
見せていたのっぺらぼうは、何処となく寂しげだ。

その耳元に先生が何事か囁いた。
一瞬、ぎょっとした表情を見せたのっぺらぼうは、
唇を噛み締め、こくりと頷いた。

「本来なら、こんな危険な事を頼みはしないのですが」
申し訳ない、と頭を下げる先生に、のっぺらぼうは
高らかな笑い声で応えた。

「いやですよぅ、こんなあたしで良かったら
いくらでも使ってください」

「ありがとう。その時が来るまで、身を隠しておいてくださいね」
先生は、とと、と軽やかに寺の縁側に戻ると、皆を見渡した。

「私が思うに、数多くの手下と共に身をかくせる場所というのは、
この都といえども、そうは多くありません。
おそらく、奴らは大きな寺院に身を隠しているのでしょう。
例えば仁和寺。清水寺。興福寺。南禅寺。
夜半を待って動きますが、くれぐれも無理はしないように。
どのような力を持っているか、得体が知れませんから」