どういう造りなのか判らないが、コンクリートの階段は
何時の間にか自然石に変わっている。
洞窟をそのまま使用したかのようだ。
館の地下に、こんな大きな洞窟が存在するとは、
おそらくこの街の住人ですら知らないに違いない。
なんだか私達、ホラー映画の登場人物みたい。
しかもこの後、どちらかが怪物にやられるのよ。
麻理は得体の知れない恐怖をねじ伏せるように
執事に話し掛けた。
「そうだ。あの、執事さん」

「はい」

「あなたのお名前は?いつまでも執事さんてのも呼びにくい」

「そうですか」
くるりと振り向いた執事を見て、二人は思わず悲鳴をあげた。

「お静かにとお願い申しあげた筈ですが」

「いや、だって、下からロウソクで顔照らすんだもん。怖いって」
執事は彫りの深い顔立ちである。
陰影がクッキリと現れ、非常に怖い。
その効果を知ってか知らずか、執事は微かに笑みを浮かべた。
「私のことはビクターとお呼びください」

「ビクター」

「そう。さ、着きました。くれぐれもお静かに。
この時間ですと主は未だ、眠りからお目覚めではないかもしれません」