「これは面白い、さすが槍の又佐だな、足で槍を使おうと
いうのか」
大黒天が舞い踊りながら笑う。

「良く判ったな。六番は足に履いて使う。このようにな」
又佐の足が長持から出てきた。
鼻緒が付いた槍を履いている。
又佐が蹴り出すと、その槍は真っ直ぐに大黒天へ飛んだ。
大黒天は辛うじて小槌で受ける。その隙に又佐は手首の自由を
奪う縄を切った。

「なんとまぁ器用な爺様だの、又佐よ。わしと闘うつもりか」

すでに又佐は命を捨てる覚悟をしている。
ならば一人でも多く、道連れにするのが武士としての本懐である。
別して、大黒天を十兵衛様のところに行かせるわけにはいかぬ。
この者さえ倒してしまえば、何者も変化させることは出来なくなるのだ。

又佐の壮絶な気配を察したのだろう、大黒天の顔から初めて笑みが消えた。
「爺様。命、捨てるか。もったいないのう。あぁもったいない!」
そう囃したて、大黒天は打出の小槌を振った。
空間に妖しのものが現れる。
ひょうすべ、大首、髪切り、見上げ入道。

又佐は傍らに置いた長持ちから二番を取り出した。
その槍は先端が異様に膨らんでいる。導火線らしき紐が見える。
腰を落とし、それを構えると又佐は導火線に火を点けた。
強烈な爆発音と共に、槍の先端が弾けた。
そこから飛び出したのは数十の鉄串。
鋭い串の先が四匹の妖しのもの達をぐしゃぐしゃに切り刻んだ。
肉槐となった妖しのものは、たちどころに溶けていく。
二番の槍は、多弾頭の飛び道具であった。

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