「ほ、本当ですかっ!」

「行くかね?」

「せ、是非に及ばぬっ!」
津川君、えらく時代掛かった返事である。

「だがな、もしも、という事もある。なぁ、津川君。
お互いに家族連れで行こう。最後に妻孝行しておくのも
良かろうよ」

「はい。そうします…」
津川君、取材旅行ということで編集部から一切合切の
費用を捻出してもらった。

さて、西へと向かう車中。
立川先生、余程その神社を信頼しているのか、
或いは肝が据わったのか、普段と全く変わらぬ態度である。
奥さん同士は、互いの愛する夫に何が起こるのかも知らず、
ニコニコと談笑を続けている。
津川君一人、暗い顔である。

宿は古びてはいるが、どっしりとした風格が心強い建物であった。
宿の女将に連れられて、チェックインの手続きをしながらも、
津川君はまだ顔色が優れぬ。

立川先生の奥方に続いて、宿帳に名を記そうとした
津川君の手が止まる。

八へ