大きなテントは、お化け屋敷や見世物小屋、そしてサーカス。
教室の中までテントを建てる音が聞こえてくるのだ。
じっとしていろと言う方がどうかしている。
そして終業式を待ちかねた子供達は、なけなしの小遣いを
握り締めて神社にやって来るのだ。
リンゴ飴、ベビーカステラ、綿菓子、たこ焼き。
輪投げ、金魚すくい、銀玉鉄砲、ゼンマイの戦車。

進はリンゴ飴と銀玉鉄砲を買うつもりである。
本当なら、ゼンマイの戦車が欲しかったのだが
貧しい暮らしを遣り繰りしてお小遣いをくれた
母に無理は言えない。
リンゴ飴と銀玉鉄砲なら、どちらも150円なのだ。
隆も似たようなものだが、彼の場合、食べる方が先だ。
たこ焼きに焼きソバ、お好み焼きまで買うという。

リンゴ飴なら、あの屋台と決めてある。
怖い顔のおじさんが一人でやっている店なのだが、
他のリンゴ飴より少しだけ飴が分厚いのだ。

驚いたことに、一つくださいと進が言った時、
おじさんは微笑んでこう言ってくれた。
「毎年ありがとな。100円でいいよ」

「え。ほんと?ありがとう、おじさん」

「いいってことよ。また来年もよろしくな」
残りのお金が200円になった。