「お待ちどうさま」

綾の目の前に、出来上がった料理が並べられた。
まずは味噌汁。
なんと優しい味だろう。
ひじきご飯も、きゃらぶきも、ささくれてトゲだらけに
なった綾の心に沁みてくる。
にしんの塩焼きを一口、食べてみる。

何だこれは。
塩焼きなどと言う単純な料理が、何故こんなに奥が深い。

「あ、あの」

「へぇ、何ですか」

「これ、塩焼きですよね」

「えぇ。ま、ちょいと手間はかけてますがね。塩焼きです」

「だったら何でこんな複雑な味がするんですか」

「お。嬉しいねぇ、お客さん、この塩の味が
判りますか。いいでしょ、教えてあげますよ」

熊は先ほどの塩を出して来た。
「こいつを使うんです。海の精、っていう塩でしてね、伊豆大島でしか
できない。太陽と風だけを頼りに、何日も何日も時間をかけて
できた塩には海が凝縮されてるんですよ」

六へ