「三日前に新しい様式のデータが配布されているはずだが」

覚えがない。この三日間、残業を含めて35時間以上会社に居るのだ、
知らない筈が無い。

「いや、私は配布された覚えがありませんが…」

横曽根は、取ってつけたような笑顔を見せた。
「え?あぁ、そうだったか。おかしいな…あぁ、すまんすまん。
俺が預かってたよ。これだ、これ使ってやり直せ」

ぽい、とフラッシュメモリが投げ出された。

「すまんな。なんだその顔は。この程度で腹を立てるとは、本当に器が小さい男だな」

この瞬間、利一は地獄通信にアクセスすることを決めた。


またもや一人だけ居残りだ。
企画書をやり直しながら利一は午前零時を待った。
地獄通信のホームページは既に開いてある。

「くそ、わざとだ、知っててやりやがった。
器が小さいのはテメェじゃねぇか」


午前零時が近づいてくる。
「やるぞ、やってやる。……でも怖いなぁ」

事ここに及んでも、まだ迷っているのだ。
優柔不断を実写化したような男である。

「やるぞ…怖いな。いや、やらねば。あぁでもなぁ」

「おじさん、だったらアタシにしなよ」
突然、声をかけられ、利一はキャアと悲鳴をあげた。