あの少女はどうして
いるだろうか。
転勤先に慣れた頃
私はどうしても
もう一度だけ、少女に
会っておきたくなった。

できれば彼女が
幸せに成仏して
くれれば…
その為の何かヒント
でも無いだろうか。
駅に向かいながら、
私はその事だけを
考えていた。

駅までの道は、卒業式
を終えた学生で
溢れていた。
本当なら、彼女も
この中に混じって
明日からの希望に
胸を膨らませていた
に違いない。

その時、ふと私は
思いついた。
文房具店に立ち寄り
買い物を済ませ、
彼女の元に向かった。

やはり、彼女はそこに
居た。

「やぁ。元気だった?
元気ってのはおかしい
か…」

「あ。お兄さん!
どうしたんですか?」

「今日は君にあげたい
物があって。これ。」

私はそう言いながら、
用意した物を出した。
それは、即席で作った
卒業証書だった。

「君の名前をまだ、
聞いていなかったね。」

「美雪です。美しい雪。」

私は卒業証書に美雪
と書き込み、少女に
見せた。

「君の卒業証書だ。
こんな事ぐらいしか
思いつかなかった。
ごめんね。」

少女は花が咲いた
ように微笑んだ。

「ありがとう。
ありがとう ございます。
本当に うれしい。」

その時だった。

「すいません、そこ、
いいですか?」

私は驚いて振り向いた。
そこに居たのは、あの
彼氏だった。

「君は…いや、ごめん
何かここに用?」

「はい、この花をここ
に供えたくて。」

「花?」

「言っても信じて
もらえないですよ。
今はもう見えない
けど、この辺りかな」

ニコッと笑い、少年は
少女の足元に花を
供えた。
そして、こう言った。

「どこの誰かは知り
ませんが、あの時
俺を脅かしてくれて
ありがとう。おかげで
俺は自殺を思い留まる
事ができました。」

「君、今のは…」

「あ、いいんです。
俺のおかしな思い込み
ですから。 多分、その
辺りにお世話になった
人がいるんです。
お邪魔しました。」

彼氏が立ち去り、俺は
振り返り少女を見た。

泣いていた。
けれど、今度の涙は
喜びの涙だった。

段々と姿がぼやけて
きた。

「お兄さん、
ありがとう。
やっと卒業できます。」

舞い落ちる桜の花びら
が一瞬、彼女の姿に
なり、 そして空へと
消えた。

「卒業おめでとう。」

私はいつまでも空を
見上げていた。