それからは、ツリーの
灯りを点けた時だけ、
二人が現れるように
なったらしい。

きっと、あの二人は
まだツリーの前で
母親が帰ってくる
のを待ってるんだよ、
そう言って祖母は
泣いた。

噂が広まってしまい、
御近所の手前もあって
そのツリーは屋根裏に
片付けてしまった
という事であった。

携帯を切って、私は
もう一度店の前に
出てみた。

ツリーの淡い灯りを
受けて、二人は
そこにいた。

帰ってこない母を待ち
何十年も待っている
のだろう。

よく見ると、兄は妹の
手を自分の服の
ポケットに入れて
暖めてあげていた。

妹は時々、兄の顔を
見て微笑んでいた。


私は涙を押さえる事が
できなくなっていた。

もう少し、このまま
点けておいて
あげよう。

私はそう決めた。
幸い、今夜は商品の
整理の為にこの店に
泊り込むつもりだ。
一晩中、点けて
おいてあげよう。

商品の整理をしながら
私は時々、表を見た。
二人はジッとツリーを
見ていた。


夜10時を過ぎた頃、
二人が突然、後ろを
振り返った。

私も思わずそちらを
見た。

二人の視線の先には
一人の女性が居た。

着物姿で風呂敷を
下げ、二人に向かって
ニコニコと微笑んで
いた。

二人はその女性に
向かって走っていく。
長い長い間、
待ち続け、ようやく
帰ってきた
母のもとへ。

三人は笑顔
で抱き合った。


そして
ゆっくりと
ゆっくりと、
消えていった。

私はもう少しだけ、
ツリーを点けておく
ことにした。


空の上から親子が
見ているような気が
したからだ。