これも音がしない。
そうこうする間に、徐々に周りが暗くなってきた。

早くここから出なければ、という気持ちだけが勝り、なかなか足が進まない。

辺りはいよいよ真っ暗になっていく。

もう駄目かと思った瞬間、ようやく鳥居から外に出られた。


それ以来、鬱々として気分が優れず、やることなすことが上手くいかないという。
さらに、夢の中に白髭の老人が出てきては睨むらしい。

何かやらなかったかと尋ねると、最初は口ごもっていたが、ようやく白状した。

「列に並んでる時に、一万円札が落ちてたので拾ってポケットに入れた」

呆れ顔の私に、彼は何度も頭を下げ、何とかならないかと頼み込むのであった。

正直に言うと、あの神社に行くのは嫌なのだが、困り果てて痩せ衰えた彼を見捨てるわけにもいかない。

渋々付き合うことにした。

神社に到着し、鳥居をくぐり抜けた私は、再度呆れた。

彼は手も清めず、口も濯がず、すたすたと社に向かおうとしている。


ほとんど怒鳴りつけるようにして呼び止め、改めて礼儀作法から教える。
神殿に向かい、彼は二万円を賽銭箱に入れた。

ゆっくりと丁寧に二拝し、恐る恐る柏手を打った。

その途端、
ぱぁぁぁぁんっ!

と凄まじい音がした。

なんと、絵馬が真っ二つに割れたのだ。

腰を抜かした彼を無理矢理立たせ、何とか最後まで終え、神社を出る。

確かめはしなかったが、割れた絵馬は恐らく彼が掛けたものだろう。


彼が今どうなっているかは、まだ連絡がない。

携帯も繋がらない。

恐らく、大丈夫だろうとは思うのだが…