高く高く上がった信太がジグザグに落ちてきます。
まるで稲光のように、最後の鳥居に向かいます。

「しもた。少し高さが足らん。ぶつかってしまうのぅ」
さすがの信太も力が尽きたのでしょう、目測を誤りました。

ところが、ぶつかってしまうかと見えた瞬間、信太の体は
スルリと抜けました。

見事、着地です。
全ての鳥居を飛び越したのです。
爆発するような拍手が起こりました。

「では、本年の優勝。信太稲荷」
信太がヨタヨタと王子稲荷様の前に進み出ます。

「信太、良い物を見せてもらった。信太稲荷には主領の位を与える」

「ありがたき幸せ。王子稲荷様…」

「何じゃ。」

「最後の鳥居、ありがとうございました」

「判っておったか。つまらぬ悪戯じゃ、許せ。あの仔狐へ、わしからの贈り物じゃ」

ぶつかる寸前に、王子稲荷が鳥居を一瞬だけ、低くしていたのでした。

「さぁ、皆のもの、久しぶりに出た主領じゃ、狐火で祝えぃっ!」

一斉に狐の尻尾に火が点りました。
狐火に照らされた信太と小太郎は、歓声に見送られながら
帰っていきました。

信太稲荷は、新しく建て直されました。
えらい議員さんの夢に現れた王子稲荷が、何やら脅かしたようです。
沢山並んだ赤い鳥居を見上げ、信太と小太郎はいつまでも
いつまでも微笑んでいました。