ぎち。

また、きしんだ。
恭子は右の眉だけを上げ、睨みつけるように天井を見た。
古い家だから仕方ないとはいえ、やはり気になる。
早く業者を決めなきゃ、何度となく繰り返した呟きがまた漏れる。

この家に暮らし始めて二カ月が経つ。
昔ながらの日本家屋に憧れた夫の秀一が無理矢理選んだ家であった。
当然、至る所に不便がある。
最新のシステムキッチンを設置したぐらいでは、恭子の不満は如何ともし難い。
隙間風を無くし、日当たりも考慮した家にしたい。
今のままでは、至るところに暗闇が有り過ぎるのだ。
それが無理でも、せめて、あのきしみ音だけでもどうにかしたい。
秀一が居なくなった今ならば改築できる。

ところが。

最初に頼んだ設計士が交通事故で死んだ。
ひき逃げらしく、未だに犯人は捕まっていない。
次に依頼した工務店は火事を出してしまった。
三番目は通り魔に刺され、死亡。
四番目は地下鉄の階段を踏み外し、重傷。
凡そ考え得る不幸の全てが、恭子の依頼先に訪れた。
横の繋がりが強い業界である。
たちまち噂が広まり、恭子の依頼を請ける業者は居なくなった。