「どした。あ?そんなところで。ほれ、こちゃさ来ぅ」

子猫は、まるで恐れることなく与助の手に体を摺り寄せてきた。
すでにゴロゴロと喉を鳴らしている。

「なつこい猫じゃの。ははぁ、さては腹がすいとるか」

ちょっと預かっとけと、与助は猫を杉子の膝に置いた。
やはりそこでも猫は甘え続けたままだ。

「おかしいのう。虎やとばかり思ぅたがなぁ。この眼、何とかならんもんかのぅ」

杉子は手探りで子猫を触った。
あまり目が見えないらしい。
子猫は、ここに居ますよとばかりに自ら身を摺り寄せた。

「めんこいのう。じいさん、飯はまだかの」

「待て待て。ほれ、猫まんまじゃ。煮干も付けたぞぃ」

子猫はピョン、と膝から飛び降りると、にゃむにゃむと
声を立てながら食べ始めた。
その声があまりにも面白く、与助と杉子は大声で笑った。
綺麗に食べつくすと、猫はまた杉子の膝に戻り、身づくろいを
始めた。