「待て、待つんだ光司っ!」
利樹は大声で止めながら必死で走った。
心臓が口から飛び出しそうになる。
ようやく追いついた。
車に気づき、恐怖で立ちすくむ光司を
引き摺るようにして、共に倒れこむ。
その目の前を車が通り過ぎていった。

「光司、大丈夫か」

一言だけ声をかけるのが、やっとであった。
激しい頭痛に襲われ、利樹の意識が遠くなる。

「利樹さんっ?!どうしたの、利樹さんっ」

「かあさんをよんで…来…てくれ」

「利樹さんっ!やだよ、死んじゃやだよっ!死なないでよ、
もう置いてかないでよっ!死ぬなよぅ、お父さんっ!」

遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。

(邪魔なサイレンだな…せっかく、光司が、お父さんて
呼んでくれてんだよ。少し静かにしてくれよ…)

薄れていく意識の中で、利樹は静かに微笑んだ。