村人から教えてもらった哲郎の墓の前で
仁科は道着に着替えた。

「哲郎。よく鍛錬を積んだな、すごいぞ。
今日、おまえに道着を持ってきたんだ。」

そう、墓に話し掛けながら真っ白な道着を取り出した。

「これを着たおまえが見てみたかったよ。
そうだ、おまえに用意したのは、この帯なんだが…」

手にした白帯をしばらく見つめ、仁科は己の黒帯を外した。

「おまえにはもう、こっちが似合う。
哲郎、仁科流空手免許皆伝だ。
受け取ってくれ」
黒帯を墓に供え、仁科は手を合わせた。

「俺はまだまだ弱いな、全国で優勝したくせに、
こんなに涙が出てきやがる」

涙を振り切るように仁科は立ち上がり、
大きく十字を切った。

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