「福やん、気をつけて。今の音を聞きつけるはずだ。来るよ」
先生の言葉を裏付けるように、凄まじい怒りのオーラが
上空から降り注いできた。

「上だ。」

見上げるとそこには、女が浮かんでいた。
黒髪を振り乱し、真っ逆さまに降りてくる。

「きさまら、何をしたぁぁぁぁっ!!」
四つん這いのまま、地上に降り立つ。
激しい怒りが熱波のように先生と福を襲った。

「何をした、ですか?申し訳ないが、卵を処分させて
いただきました」

「卵っ!あたしの子供達っ!」

女の姿が変化していく。
薄汚れたコートを突き破り、残りの手が現れた。
眼瞼の無い目も8個に増える。
牙が剥き出しになり、口が大きく裂け始めた。
そこに蜘蛛とも女ともつかぬ者が出現した。

「土蜘蛛と女が混ざり合っているのか。どうりで妙な
気配がしたわけが判りました。福やん、いくよ」

「はい、先生」
左右に分かれた二人は、瞬時にして蜘蛛女の前後に移動した。
早めに決着をつけようというのだろう。

福は地獄への穴を開ける構えをしている。
先生の尻尾も金色に輝き始めた。

だがそこまでだった。二人とも動けない。
いつの間にか、女から放たれた蜘蛛の糸が
二人の動きを封じていた。
二十へ