里美はそう言い放つと、早速、産婦人科病院のリストと
助産婦のリストを書き出した。
恐るべきことに、自力で出産する方法まで調べ上げた。

「いざとなりゃ、自分一人でも産んでみせる」
そこまで言い切られては、俊輔に反論できる余地は残されていない。
里美になるべく体の負担が無いように心がける事ぐらいしか出来ない。

また、里美は良く動くのだ。
高い現場にも平気で上がる。
冷や冷やしながら見守る俊輔の目の前で、里美は軽々と働き続けた。
だが、彼の知らない所で里美自身は、己の体を慈しんだ。
お腹の中で眠る我が子に話しかける。
日増しに己の声に応えて胎動が深まる。
それを励みに毎日を重ねていった。

学校の方が一足早く産声をあげた。
子供達の笑顔と歓声が教室中に溢れている。
俊輔の授業を教室の後ろで見守りながら、里美はルアンダに
来たことを心から幸せに思った。
お腹を撫でながら、まだ見ぬ我が子に話し掛ける。
それは出産という一大事業を成し遂げる母親にだけ
許された特権だ。


五へ