僧の内の一人が十兵衛に近づいてきた。
前に出てかばおうとする又佐を押し止め、
十兵衛が僧に話し掛けた。

「拙者、柳生十兵衛三厳。天海殿はおられるか」
悪びれもせずに言う。

僧は一瞬、たじろいだがすぐさま本堂に戻った。
途端に何人もの僧兵が現れ、十兵衛達を取り囲む。
「大人しく来てくだされば、手荒な真似はいたしません。
もとより、ここは境内。血を流すことは避けとうございます」

「承知。案内いたせ」

「その犬は…」

「構わぬであろう。妖しのものが僧兵になるぐらいだ。
それに比べれば可愛いものだ」
すでに十兵衛は、取り囲んだ僧兵が人ではない事に気付いていた。

「適いませぬな…判りました。どうぞお通りくだされ。僧正殿がお待ちに
なられております」

空ろな目で彼らを追う人々の間を抜け、十兵衛達は本堂に入った。

四十七へ