「でぇじょうぶかな…ま、いいや、いいきっかけだ。」

いたってのんきな男でございます。

「はい~一名様ご案内~」

「居酒屋だね、どうも」


藪庵先生、何だかんだ言っても、そこは医者でございます。白衣を着るとやはりそれらしく見える。

「こほん…どうなさいましたかな」

「えらく様子が変わるねぇ。てぇしたもんだ。実はね、いや信じてもらえるかなぁ」

「何だか奥歯に物が挟まった言い方だな」

「あ、だめだ先生」
熊さん、いきなりほっぺたがふくれます。

「な、なんだ熊さん!そりゃどうした」
「奥歯に物が挟まった、なんて言うから」

熊さん、奥歯から物を外します。

「実はね、こないだ妙な本を拾ってからこうなんで。目の前で、ことわざを言われると実際それがおこっちまう」

「なんだね、そりゃ」

「しかも、気味悪がったか、娘の姿も朝から見当たらねえ」

「おや、泣きっ面に蜂だな」


「あぁっ!だめだってば」

突然現れた蜂が部屋中に飛び回ります。
這う這うの態で逃げだしました。

「厄介な病じゃのう。だからあれほどおいぶさんが『拾った物を食うな』と言うておったじゃろう」