辻君は二年前に妙なバイトをやっていた。
盗聴調査と呼ばれるものである。
個人宅に仕掛けられた盗聴器を発見し、回収する仕事である。

それは六月に入って間も無い日曜日。
辻君は、回収した盗聴器を会社から貰って帰った。
目的地は有名な幽霊屋敷。

荒れ果てた家に盗聴器を仕掛けた。
近くの空き地に駐車し、受信機のスイッチを入れる。

何も聞こえて来ない。
何時間か経ち、すっかり飽きた辻君は受信機のスイッチに手を伸ばした。
その瞬間、会話が始まった。

低くかすれた声と、甲高い声。

『この子達だけでも助けてあげられないかしら』

『だめだ、俺達と一緒に死んだ方が幸せだ』

『なにか方法が無いの』

『仕方ないだろ。もう決めたんだ』

辻君は、ぽっかりと口を開け、受信機を見つめた。
人が居る筈が無い。
ぼんやりと受信機を見つめたまま、体が固まる。
何十秒か続いた会話は突然止んだ。

「あれ?故障かな」
調整しようとした辻君の背後で擦れた声がした。

『なぁお前 他人の不幸がそんなに面白いか』