「アジサイ、ですか…」

「そう。アジサイ。どういう意味なんだろ?」

カウンター席にいた妙な男が、妙な日本語で話題に入ってきた。
この男も常連である。どこかの国の右大臣と自称していた。

「はなこっとばーっ。ですよ。はんなこっとば。」

「なによ、右大臣ちゃん。はんなこっとばって。」
あきさくらのママが睨みつけた。

いぶが思いついた。
「花言葉のことかしら?」

「そうそう、そうとも言いますねー」
右大臣は、そうそう花言葉ねーと言いながらカウンターに戻る。
団子鼻の花言葉は何でしょねーとか言っている。

「熊さん、アジサイの花言葉って知ってる?」

もちろん、熊は知っていた。知っているからこそ、言うのをためらった。

「アジサイの花言葉は…『移り気』です」

祐子の瞳からポロポロと涙がこぼれ始めた。
店内が沈黙に覆われる。

その沈黙を破ったのは、ねこやであった。

九へ