その香りを嗅ぐだけで、ざわついていた気持ちが安らいだらしい。
いつの間にか、芳雄も目を覚ましている。


「これは…ああなるほど」
独り言のように呟くと、ママさんはトモを手招いた。

「少し寄り道しなさい。ここからはそう遠くない。そこでなければ収まらない」

断固とした様子に、メンバー全員が同時に頷いた。

それほど進まぬうちに、ママさんは車を止めさせた。

大きなパチンコ屋の駐車場である。

「ここで亡くなった子。女の子。ほったらかしにされて、熱い熱いと」

ママさんは、優しく、悲しげな顔を見せた。

「ここに居てはいけない。新しく産まれなさい」

先程の香りが満ちる。
ママさんは懐から美しい飾りの付いた鈴を取り出し、ふるふると鳴らした。

明らかに空気が清浄になっていく。
芳雄の顔も、やや精気が戻ってきた。

「マザー、じゃあこの駐車場で女の子が亡くなったんですか」


「そう。あんた達の買った車で。まだ四歳の子。
明るい所へ昇りなさいと教えた」

「じゃあもう大丈夫なんすか」

ママさんは厳しい表情でトモを見た。

「まだ。だめ。もう一つ行く場所がある」