「これはあなたの人生の本。全部で…200ページ。
丁度80歳。割と長生きするわね」

司書は、もう片方の手に、美しい飾りの付いたナイフを
持っていた。
そのナイフが保岡の人生の本を撫でるたび、
一枚、また一枚と本が切り抜かれていく。

「あなたが切り抜いたページは、全部で70ページ。
あなたの人生の本も70ページ切り抜かせてもらう。
あなたの人生から、28年分の記憶が消える。
それが罰。」

バサバサと落ちていくページを見て、保岡は悲鳴をあげた。


「あれ。俺、ここで何してんだろ」

保岡は、見慣れない街に居る自分に気づいた。

「ええと、今から何するんだっけか」

どうしても思い出せない。

自分が何処に暮らしているのか、何処で働いているのか、
家族の顔、友達の顔、全てが思い出せない。

保岡に出来るのは、ただ泣きながら、歩くことだけだった。